私がスマホを直すと二人の意識もまた会話へと戻り、でさー、と続きをしゃべりだす。
相変わらず会話に花を咲かせていた。
その姿を私も見ているのに二人の声が聞こえない。まるで口パクをしているかのようだ。耳にフィルターでもかかってしまっているのだろうか。
私の意識は全てスマホの中のあお先輩へ向けられていた。
身体はここにあるのに心だけがべつのところへふわふわと泳いでいるような、そんな感じがする。
楽しそうにおしゃべりをしている姿。
それを私はボーッと眺めながら、笑顔だけは貼り付けて他のことを考える。
分からない難問。考えても考えても答えなんか浮かんでこない。
「ねえ、七海!」
ポンッと私の肩を揺らされると、パチンッと頭の中が弾けて意識を二人へ戻すと、眉尻を下げて私を見つめる視線を二つ感じた。
「またボーッとしてたよ」
「具合でも悪い?」
「……あー、ごめん! ちょっと昨日夜更かししちゃって…」
誤魔化すと、あ〜そういうことあるよねえ
、と同調すると、私もこの間漫画読んでて夜中になっちゃったよ、と笑って話は流れてゆく。
話題の中心から私が消えて小さくホッと安堵する。
二人はおしゃべりをするのが大好きだ。
だから休み時間の間はほとんど会話が絶え間ない。
初めに話したことなんてどんどん流れて忘れてゆく。
それは流れる川のように、新しい水が流れてくるたびに古い会話は押し流されてあっという間に姿がなくなる。
新しい水がどんどん溢れる。