片付けが終わると。

「七海ちゃんがおいしいって言ってた限定アイス見つけたから買ってあるの。よかったら食べて」

と、私に声をかけてくれる。


前に私が限定アイス買って食べたときのこと覚えててくれたんだ。
いつも七海ちゃんには助けられてばかりだからそのちょっとしたお礼、と言って冷蔵庫からアイスを取り出そうとする早苗さん。


「早苗さん、ごめん」

先手を打った私。
えっ、と私に向き直る早苗さん。


「今まだお腹いっぱいで食べられそうにないや」
「あ、そうだよね。……じゃあいつでも食べてね! 私また買って来るから」
「…うん。ありがとう」


アイス一つなんて余裕で食べれそうだった。
けれど、これ以上ここにいると苦しくなると知っているから、私は早く逃げたかった。


「ただいまー」

玄関の方から声がする。
さっきまで夢中になっておもちゃで遊んでいた美織ちゃんが、あっ、パパだあ〜と一目散に玄関へ駆けた。
冷蔵庫の前で立ち止まっていた早苗さんもハッとして、お出迎えしなきゃ、そう言って私の横を通り過ぎて玄関へ向かった。

冷たい風だけがその場に渦巻いて、私一人だけがキッチンにポツンと取り残される。


「パパ、おかいりー!」
「おお、美織。ただいま」
「あなたおかえりなさい」
「早苗、ただいま」


三人の仲睦まじい声がする。
その瞬間、私は息が苦しくなった。

私なんて必要ない、そう言われているみたいに聞こえてたまらなくなった私は、キッチンから逃げた。
自分の部屋へ戻ろうとしていると、廊下でお父さんと鉢合わせする。