このまま迷っていても無駄に時間が過ぎてゆくだけだ。 もうなるようになれっ! そう思って、震える指先で投稿ボタンを押した。
すると、ものの数分でコメント一件の通知が画面上に表示される。
私はどきどきしながらそれを確認する。
『何か嫌なことでもあったんですか?』
まるで私を心配してくれているような言葉がそこには並べられていた。
会ったことなければ、どんな人なのか検討もつかない。
男なのか女なのかさえも分からなくて、そんな人に何かを打ち明ける気にはなれない。
──その、はずだったのに。
『ちょっと毎日が苦しくて』
なぜか、私は指先一つで友人二人にも打ち明けることのできない言葉を打ち込んでいた。
そして慣れた手つきで、投稿ボタンを押す。
今までは自分の投稿に誰かが反応をしてくれることはなかった。
べつにそれを望んでいたわけではなかったから、それでもよかった。
けれど、名前も顔も知らない人に"いい子"を演じていない私自身を見つけてもらえたような気がして、少し嬉しくなる。
現実の友達には知られたくないのに、仮想空間の他人にはなぜか、不思議と素の自分でいられる。
そんなことを考えて少し感慨深くなっていると、すぐにまたピコンッと通知音が鳴る。さっきもそうだったけれど、この人は返事を打つのが早い。
私は緊張しながら、確認する。
『毎日無理しすぎなのでは? たまには自分のことを大事にすることも大切ですよ』