「あっ、なみちゃん!」


 ドアから現れた美織ちゃんは、私に気づくなり、ぱあっと表情を輝かせた。


「美織ちゃん、危ないから慌てないで」


 いきなり走り出す美織ちゃんに先生が、
苦笑いを浮かべながら慌てて駆け寄る。


 いつものことだから先生は慣れている。

 自分で言うのもあれだけれど、美織ちゃんは私に懐いてくれている。

 だから、早苗さんに頼まれてお迎えに行ったときは、美織ちゃんはすごく喜んでくれる。私のことをほんとのお姉ちゃんのように慕ってくれる。


「なみちゃん、きてくれたの?」
「うん。早苗さんが今日仕事が終わらないんだって。だから私が来たよ」


 実際、美織ちゃんがどこまでを理解できているのか分からないけれど、事実を知ったらどう思うんだろう。

 ──なんて今はどうでもいいか。


「あのねっ、きょうね、おえかきしたんだけどね、せんせーにほめられたの! あとねっ、みおりのすきなハンバーグがおべんとうに入っててね」


 私を見るなり今まで抑えていたものが一気に飛び出すように、美織ちゃんの口からはとめどない喜びが次から次へと溢れてくる。

 相槌を打つ暇さえ与えられない。


「それでね、それでね──」


 まだまだ止まりそうになかったため、


「美織ちゃん、お家帰っておやつ食べながらお話しよっか」


 私がそう言うと、「おやつたべる!」今度はそっちに反応して嬉しそうに両手をぱちぱちさせる。