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保育園に向かうと、お迎えを見送りする先生がいた。私に気づくと「あ」とニコリと微笑んで駆け寄る。
「美織ちゃん、迎えに来ました」
普通のお母さんたちなら、ここで軽くおしゃべりをするのかもしれない。世間話に花を咲かせるのかもしれない。
けれど、なるべく早くここを離れたかった私は、余計な世間話は省いた。
「今、呼んでくるね。ちょっと待っててね」
私のそばから離れて部屋に入ると、
「美織ちゃーん、お姉ちゃんが迎えに来てくれたよ」
開けっ放しにされていたドアから声が盛大に漏れた。
〝お姉ちゃん〟
その言葉が、まだ私にとって違和感がある。
なぜならば、姉ではあるけれど半分しか血が繋がっていないからだ。
そのことを保育園の先生たちは知らない。
だから、実の姉妹としか思っていなくて。もちろん先生たちに悪気がないのも知っている。
私が勝手に違和感を覚えているだけ。
この世界に、半分しか血が繋がってない姉妹なんてたくさんいる。血が繋がってなくたって小さい頃から一緒に過ごす兄妹だっている。血の濃さなんて関係ない。
──そう思う人もいるんだろう。
けれど、私はまだ受け入れられない。
美織ちゃんと早苗さんを。
こんな私は、心が狭いのかもしれない。