「SNSで話しかけた相手がまさか同じ学校の人だったなんてそんな偶然がふつーにあると思う?」
「……え?」
急になんの話なの。
言葉に理解が落ち着けずにいるが、そんな私などお構いなしに先輩は。
「俺、去年の十二月頃に七海のこと見かけてるんだよね。だから、七海がSNSしてるのも知ってた」
「……え?」
──ちょっと待って。
全然意味が分からないんだけど。
「七海、一度だけ中庭でスマホ落としたことがあるでしょ」
「スマホ……?」
「うん。それで落ちたやつを拾ったのが俺」
続いた言葉によって、記憶が少しずつ手繰り寄せられると「あ」と声をもらした私。
そうだ。私、去年一度だけスマホを誰かに拾ってもらったことがあるけど、俯いてばかりだったから顔なんて覚えていなくて。
今言われるまで気がつかなかった。
むしろ今言われてもあれがあお先輩だったなんてピンとこない。
「……あれ、あお先輩?」
「そ。七海は下ばかり向いてたから全然覚えてないだろうけどね」
笑ったあと、そのとき、と言葉を続けて、
「スマホ画面がSNS開きっぱなしだったんだよね。それでチラッとアカウント名が見えちゃってさ。勝手に投稿を覗き見するのは忍びなかったけど、なんかいつも暗い顔してたから気になって」
淡々と重ねられる言葉に、開いた口が塞がらないとはまさしくこのことだ。
「だから七海が何かに悩んでるんだろうなぁとはずっと前から思ってて」
「え?」
さっきから「え?」以外の言葉が出てこない。
だって、全然予想していなかった言葉ばかりが私に向けられるから。