「謝って許されることではないけど、美織が七海ちゃんの大切なものを壊しちゃってごめんなさい」

言ったあと、小さく頭を下げる早苗さん。


「ちょっと待ってくれ」


事を理解していないで困惑していると、

「これは、どういうことなんだ……?」

私と早苗さんを交互に見つめた。

そんなお父さんに早苗さんは、「これ」と言って話しだす。

「元々は七海ちゃんの物だったの。だけど美織がすごく綺麗だからって欲しがってしまったの」
「美織が?」

コクリと頷くと早苗さんは、

「駄々をこねそうになってた美織を察して七海ちゃんがくれたんだよね」

私に尋ねるように視線を向けた。

けれど私はそれに答えられずにいると、「それでね」とまた話し始めて、

「美織が、おもちゃで遊んでいるときにブレスレットを引っかけてしまったみたいで、それで…」

そのあとのことは言わずとも理解したお父さんさんは、頭を抱えて、

「…そうだったのか」

落胆したように呟いたお父さん。
身体が一回り小さく見えた。


「俺はあの状況だけを見て、もしかしたら七海が関係してるのかと思って……」


言ったあと、ハア、とため息をもらして、私へと視線を移すと、

「だけど、そうじゃなかったんだな。……すまない、七海」

私に向かって頭を下げたお父さん。

そして、

「七海ちゃん、私もごめんなさい」

早苗さんも、また頭を下げた。

いい大人が二人して子どもに頭を下げるなんて、そんな光景、なんだか違和感しかなくて


「…やめてよ」

声をあげてそっぽを向くと、いやでもな、とお父さんはまだ納得していないようで。


まるで私が悪者みたいじゃん。
──そうじゃなくて、謝らなきゃいけないのは私の方なのに。