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見晴らしの良かった墓地を降りると、すぐ近くに海があった。
「さっきは驚かせてごめん。びっくりしたよね」
「いえ……」
首を振ると、申し訳なさそうに眉尻が下がった先輩の視線とぶつかった。
確かにすごく驚いた。言葉を失うほどに。
「でも、どうして私を妹さんのところへ…」
私が自分の悩みを打ち明けたからなのだろうかと考えたけれど、先輩は、「なんか」と言ってわずかに口元を緩めた。
「会わせてやりたいって思ったんだよね」
さらに私は困惑して、え、と声をもらす。
「妹が生きてたら今年十七になるはずだった」
「えっ、じゃあ…」
私の言葉に悲しそうに笑うと、うん、と頷いた。
「今生きてたら七海と同い年。だからこそ、妹と七海が重なって見えたのかな」
「私と、妹さんが?」
「うん。雰囲気とかが似てたんだよね。なんか悩み抱えてるんだろうなっていう感じが」
「そう、だったんですね」
先輩の横顔があまりにも悲しそうで、思わず目を逸らすと、「妹が」と言った先輩。
けれど、一旦黙り込んだ。どうしたのかと思って、視線を向けると、
「亡くなってから母さんは、抜け殻のようになって。多分、俺よりも立ち直れてないんだと思う。いつも、仏壇の前で泣いてるんだ」
弱々しく呟いた先輩。
──パン好きで食べてるからいいんだよ、ほんの少し前に、先輩が言った、その言葉を思い出す。
「……先輩がいつもお昼パンの理由って」
恐る恐る声をかけると、切なそうに口元を緩めたあと、
「そうだよ。母さんが、家事できないほどに憔悴しきってるから」
言葉を短く切ったあと、海を眺めて、
「母さんを立ち直らせてあげたいけど、俺たちじゃどうにも……だから、時間が癒してくれるのを待つしか、ないんだ」
悲しそうに声を落とした。
私も、と声をあげようとしたけれど、のどの奥に詰まって言葉は出てこなかった。
「悲しみは連鎖する」
海を眺めながら、先輩はポツリと呟いた。