薄れていく意識の中で、その人の自分に対する、憎しみのこもった瞳と、そこから零れる涙に気付いた。

 自分はずっと、この人の苦しみに気付くことができなかった。自分に直接向けてくるまで、まったくわからなかった。

 一体いつから、どれだけ傷ついていたのだろう。

 しかし自分が消えることでこの人の傷を癒すことができるのなら。この人を救うことができるのなら。喜んで死を受け入れよう。

 だけど、どうしてもこの人に伝えたいことがあった。

 最後の力を振り絞り、きつく絞められた喉から音を出す。

「ごめん……」

 これでこの人を解放することができたのかなんてわからない。これは、ただの自己満足にすぎないから。

 でも、やっとこの人は幸せになれるはずだ。

 幸せに、なってほしい……