―――中学二年、夏


 物心ついたころから、何度も何度も繰り返し見る夢があった。
 きれいに晴れた青空を鳥になって飛んでいる。飛行機を操縦していることもある。
 風に乗って飛んでいく白い花。咲き乱れる百合の花に囲まれてこちらに背を向け、星空を見上げている女の子。背中まである長い黒髪がさらさらと風になびく。
 子どものころ、飛行機が好きだった。小学一年生のときの文集では、『そうじゅうしになりたい』と書いた。だから空を飛んだり飛行機を操縦する夢を見るのかな、と思う。
 でも、全く知らない女の子の夢を見るのは不思議だった。
 知らないはずなのに、夢の世界で彼女と出会うたびに、その後ろ姿を見るだけで、どうしようもなく懐かしいような、泣きそうに切ないような、言葉にできない気持ちになるのだ。
 その夢を見た日はいつも妙に早く目が覚めてしまって、まだ夜の色を残している薄青い闇に沈んだ窓の外を、ぼんやりと眺めている。