「おっと」
つま先に刀の鞘が当たった。片手で持ち上げようとしたら、思わぬ重量感でびっくりする。
脇差と二本合わせたら、両手でやっと抱えることができるくらいの重さだ。これを振り回されたりしたら、さすがに危ない。
相手の正体がわからないので、武器になりそうな刀を取り上げることにした。本物であるはずはない──だって、本物だったら銃刀法違反じゃん──けど、長くて固くて重い時点で危ない。叩かれたら痛いし血が出る。最悪死ぬ。
「寮生にも知られないようにしなくちゃ」
私は刀と脇差を、管理人室の鍵がかかるロッカーにしまいこんだ。
翌日。まだびゅうびゅうと強い風が吹いており、暴風警報が発令された。休校になった寮生は、いつまでたっても食堂に現れなかった。
いつもは七時には朝食をとるというタイムスケジュールになっている。が、休校となるとみんな好きな時間まで寝ているのだろう。
「誰が早朝から準備していると思っているのか……」
味噌汁をかき混ぜるお玉を、力任せに折りそうになる。