鎖帷子、日本刀、髪の毛、手紙……そんなものの中に、見覚えのあるえんじ色のジャージがあったのだ。

『土方歳三はたびたび隊士に料理を振舞った。その中には現代のカレーやハンバーグに似たもののあり……』

 そのような記述もあり、笑いをこらえるのに必死になった。土方さん、私が教えた料理を幕末で再現するなんて。やるじゃない。

『なお、このジャージに似た衣類を土方がどこで手にいれたのかは、謎である』

 うちの寮です。

『池田屋事変、八月十八日の政変、戊辰戦争などなどをくぐりぬけ、ついに函館戦争で命を落とす。享年三十五歳』

 数えで三十五ってことは、実年齢三十四。若すぎるじゃないか。おじいさんになるまで生きていた新選組隊士もちらほらいるというのに。

 ぎゅっと胸が苦しくなる。

 彼は本当に、一瞬だったけど、私の傍にいた。熱すぎる、変なひとだったけど、楽しかったよ。もう会えないと思うと寂しい。

 ぱたんと本を閉じ、元あった場所に戻した。他には何も借りず、出口に向かったとき、あっと声が出そうになった。