土方さんは脇差を足元に置いた。長い方の刀を持ち、鞘を付けたまま構える。
「どうせオモチャだろ!」
総長はナイフを持って土方さんに突っ込む。その瞬間、土方さんの目がきらりと光った。
「愚か者!」
真っ直ぐに突き出される刀。ナイフの切っ先が土方さんに届くよりも早く、鞘の先端が、総長の喉元に食い込んだ。
「ぐえっ、がはあっ」
うわあ、痛そう……。のどぼとけを直撃された総長は息ができなくなったのか、顔を紫色にしてのたうち回った。
死んでしまうのではとハラハラしたけど、何度か咳をするうち、顔色が戻ってきた。が、地面に横たわったまま動けないようだ。
「その短刀とこっちの得物じゃ、間合いが全然違うだろうが」
土方さんは刀でとんとんと自分の肩を軽く打つ。
「総長……総長……。う、うわああああ!」
総長がやられ、暴走族の半分が逃げ出す。もう半分が仇を打たんとばかりに土方さんに襲いかかった。
「仇討ちか! いい根性だ!」
心底楽しそうに、土方さんは笑った。まるで地鳴りのようなその笑い声に、背中が震える。
刀を握った彼は、もう優しい寮母じゃない。幕末の鬼副長そのものだった。
「土方さん……」
笑いながら、彼は向かってくる敵を次々に打ち払った。