外をのぞく。案の定、総長はナイフを振り回していた。ヒュンヒュンと空を切る音がする。

 他の者たちは、観客のようにふたりを見ていた。「やれやれ総長!」と総長を応援する声が響いていた。

「武器がないんじゃ不利だわ」

「いやだからってソレ」

「私、届けてくる!」

 刀を抱いたまま、出入口から飛び出す。途端、総長からぎらりと睨まれた。

「ひゃんっ」

 すくみ上ってしまった私の手から、刀が引っこ抜かれた。振り返ると、山崎が刀と脇差を、両手に一本ずつ持っていた。

「おっさん、武器だ!」

 山崎はその体格にぴったりの力を持っていた。私では持ち上げるのが精一杯だった二本を、ブンと土方さんの方に投げてしまった。

 土方さんも、それを軽々と受け取る。突然日本刀を持ち出した敵に、暴走族はドン引きした。

「なんだよそれ! ずりいぞ!」

 総長がぷんすか怒る。指さされた土方さんは、ニヤリと笑った。

「それだけ大勢でひとりを攻撃してくるやつらに、ずるいとは言われたくないな」

「な、なんだと」

「お前らなぞ、抜かずともじゅうぶんだ」