「帰らねえっつってんだろ! おいお前ら、やっちまえ!」
とうとう暴走族たちがバイクを降り、雪崩のように門に群がった。ひとり、またひとりと門を乗り越え、敷地内に入ってくる。
メリケンサックをつけた拳で、暴走族が土方さんに殴りかかる。彼はそれを紙一重でよけ、体勢を崩した敵の首筋を手刀で打った。
その場にどっと倒れる男。周りは一瞬動きを止め……何が起きたかやっと理解したような顔をすると、土方さんに殺到した。
土方さんはエプロンを脱ぎ捨て、前方にいる敵に放り投げた。敵が視界を塞がれている間に、右側から来る敵のパンチを受け、そのまま背負い投げして敵の群れを薙ぎ払った。
そうしてたったひとりで敵をちぎっては投げちぎっては投げする土方さん。
「どけ!」
あとずさりしかけた敵の最後尾から、大きな声がした。道が左右にあけられる。今まで傍観していた総長が、そこを悠然と歩いてきた。
嫌な予感がした私は、管理人室に戻る。「美晴?」と山崎の声がした。
暗闇の中、ロッカーの鍵を開ける。中には、土方さんの刀と脇差が入っていた。
抱え上げると、ずっしりと重い。それを持って戻った私を、山崎がギョッとした顔で見た。
「美晴、なんでそんなもん持ってるんだ」
「話せば長くなるわ」