「俺は新選組ふく……じゃねえや。ここの寮母、土方歳三だ」
「寮母だって!?」
暴走族たちはひとしきり笑った。けれど土方さんは身じろぎひとつしない。
「うちの寮生に手出しはさせねえ」
土方さん……。彼自身も、この寮や寮生たちに親しみを感じてくれていたとわかる。胸に熱いものがこみ上げた。
「山崎にやられたやつに言っておけ。自業自得だとな」
「なんだと?」
代表で喋っていた金髪の男がぎろりと土方さんを睨んだ。いわゆる総長というやつだろうか。
一触即発の雰囲気に、ごくりと息を飲む。
「わかったら、さっさと帰りやがれ」
「そうはいくか! 山崎を出さないなら、お前が慰謝料をよこせ!」
唾が飛びそうな勢いで、バイクのシートから乗り出して叫ぶ総長。
「やっぱり金目当てだったか。俺はそうやって難癖つけて金を巻き上げようとするやつが大嫌いなんだよ!」
土方さんが声を荒らげた。ちょっと待ってよ。全然穏やかに話し合いできてないじゃない。
「ああ!? やんのかこのおっさん! よし、この門開けろ!」
「いや帰れよ」
しれっと言う土方さん。一応穏便に済ませる気はあるらしい。