「俺も昔は『バラガキのトシ』って言われたもんだ」

「バラガキ?」

「悪ガキってことだ。そういうわけなら話は早い。お前らはここで待ってろ」

 土方さんは身ひとつで外に出ていってしまう。

「俺も行く」

 あとをついていこうとする山崎を、私は必死に抱きついて止めた。

「ダメよ! 土方さんはあなたを守ろうとしてるのよ。あなたが出ていって怪我でもしたら、意味ないじゃないの!」

 山崎はぴたりと動きを止めた。離れて見ると、彼は悔しそうに拳を握りしめていた。

「様子を見るだけね」

 出入口のドアを少しだけ開け、隙間から顔を覗かせる。それほど広くない門前を突っ切り、土方さんは堂々と暴走族の前に立った。

「うちの寮になんの用だ」

「山崎ってやつがいるだろ。そいつを俺たちに渡せ」

 ブンブンとうるさいエンジン音のせいで、会話が途切れ途切れにしか聞こえない。

「事情は聞いた。お前らにうちの寮生を渡すわけにはいかねえ」

「おっさん誰だよ。ピンクのエプロンなんか着て、格好つけやがって」

 暴走族の間に笑いが弾ける。うん、たしかに……傍から見たらダサイおじさんだもんね。