「完全に自業自得じゃない! ほんとにあなたったら、門限は破るし、イジメはするし、暴力はするし、ほんとに、ほんとにもう」
「美晴は黙ってろ」
口うるさい母ちゃん化してしまった私を黙らせ、土方さんは山崎に向き直る。
「ケンカの理由は?」
山崎は言いたくなさそうだったが、しぶしぶといったふうに口を開いた。
「信じてもらえないだろうけど……」
そう前置きして語った真実は、こうだった。
繁華街で仲間とぶらぶらしていた山崎は、強引に裏通りに連れていかれる同年代の女の子をたまたま目撃。あとをつけると、暴走族が女の子を車に連れ込もうとしていた。
山崎はそれを見て、何も考えずに暴走族に突っ込んだ。女の子の手を掴んでいた男に飛び蹴りを食らわせ、仲間に彼女を預け、一緒に逃げさせた。
追いかけようとする暴走族を相手に、山崎は時間稼ぎをすることにした。そのときの乱闘で、彼は見事に相手をのしてしまったらしい。
言葉を失う私。いたずらを見つかってうなだれる子供のような山崎。そして土方さんは、彼の肩を強く叩いた。
「やるじゃねえか。見直した」
「え……?」
「ガキのくせによくやった。そういうヤツは嫌いじゃない」
山崎はガキと言われても怒らなかった。拍子抜けしたような顔で、土方さんを見ている。
まるで、叱られることを覚悟していた……文字通り、ガキのような顔で。