門は私の肩ぐらいしかない。運動神経のいい若者なら、飛び越えてしまうだろう。

「俺を誰だと思ってる。心配するな」

 彼は私の手を優しくつかみ、ジャージから離させた。ニッと笑った顔は、自信に満ちていた。

「わ、私も行きます! 管理人ですから!」

 掃除道具入れから竹箒を出し、抱える。土方さんは「やめとけよ」と、手で猫を追い払うような仕草をした。

 廊下に出て、職員出入口のドアノブを握った土方さんの後ろについていると。

「あの……」

 弱弱しい声がして振り向いた。

「なんだ、お前がきっかけか」

 土方さんは眉を顰めた。身を縮めるようにしてそこにいたのは、山崎だった。

「あなた、なにしたの!」

 暴走族に目をつけられるなんて。掴みかかりそうになった私と山崎の間に、土方さんが割って入った。

 なにを聞くでもなく、じっと山崎を見つめる。彼はぽつぽつと自白しはじめた。

「あいつらの仲間とケンカしたんだよ。その時は勝ったんだ」

 要領を得ない彼の話をよく聞くと、つまりは日曜日の自由時間に繁華街に出かけた際、相手が暴走族とは知らずにケンカし、ギッタギタのメッタメタにしてしまったらしい。

 学園で、山崎を探している暴走族が現れたという噂を聞き、早めに寮に戻ってきた。今後どうするか、仲間たちに相談していたが、襲撃は予測より早く実行されてしまった。