「いやちょっと! ダメです、危ないですよ。警察に任せましょう」
窓ガラスを割られたんだ。れっきとした器物破損という被害があるので、警察も呼べば来てくれるだろう。
「警察ってのは?」
「あー……新選組みたいなものです。市民を守る役目の」
「ダメだな。あいつら、特定の寮生に用事があるんだろう」
スマホを操作しようとしていた指が、余計に動かなくなった。
そうか。向こうも、寮生を尋ねてくる理由がある。一方的な因縁ならば警察を呼んでもいいが、そうでなかった場合。
つまり、こっちが相手を怒らせるようなことをしていた場合だ。その寮生が警察の取り調べを受ける羽目になりかねない。
とっても悪い考えだと思う。だけど、私は寮生に無傷で卒業してもらいたい。よほどのことをしでかしたのでなければ。
「だから、俺が先に話を聞いてくる」
くるりと背を向け、ドアの方へ向かう土方さん。私も、気づいたら体が動いていた。
「……なんだよ」
引き留めようとして、ジャージの裾を掴んでしまった。土方さんが怪訝な顔で振り向く。
「だって……あの子たち、ナイフとか持ってたら……」
「門を開けなきゃいいだろ」
「簡単に乗り越えちゃいますよ!」