音がした背後を見て、血の気が引いた。なんと、窓ガラスが割られていたのだ。

 すぐに灯りを消した。暗闇の中で見えなくなったが、石かなにか、硬いものを投げつけられたのだろう。

「おい、出てこいよ!」

 門の向こうから凶暴な声がした。まるで獣の咆哮。最初ひとつだった声に呼応するように、怒号が増える。

 っていうか、エンジン音がうるさくて何を言っているのか聞こえない。だけど、寮の誰かに会いに来たことは間違いなさそうだ。

 私は窓から遠い机の陰に身を隠し、スマホで警察に連絡をしようとした。その時、二枚目のガラスが破られる音が体を強張らせた。

 どうしよう、怖い。私は寮母であり、管理人だ。この寮を守る役目がある。なのに、指が震えて動かない。

 カタカタと震えていると、ガチャッとドアノブが回される音がした。そこから現れたのは、土方さんだった。

「なんだか外がうるせえと思ったら、なんだこれは。怪我はないか?」

 土方さんが闇の中で私を覗きこむ。

 助けにきてくれた──。

 ホッとしたら、目に涙が浮かんだ。

「二階から見てきた。どうやら襲撃されているようだな」

「襲撃……」

「俺が話を聞いてくる」

 土方さんが立ち上がる。ジャージにエプロンという、防御力ゼロの格好で。