もう嫌な予感しかしないから行きたくないのだけど、私は管理人だ。確認しないわけにはいかない。
寮生用の玄関はすでに施錠されている。私は人ひとりがやっと通れる職員用の出入口から、そっと外をのぞいた。そしてのけぞった。
暗闇からこちらに、サーチライトのような眩しい光が五十ほど集まっていたのだ。目を細めて見ると、それはバイクのライトだということがわかる。
そう、なぜか寮の門前に、現代では絶滅したと思われた『暴走族』らしき団体がいたのだ。
と言っても、特攻服を着ているわけではない。逆に軽装で、転んだらひどい怪我をしそう。
バイクの後ろには二人乗り用の背もたれシートなのか? 謎の羽根がびよーんと突き出ている。おそらく、重さで走るのが遅くなると思われる。いいのかな。
いやいや、そんなことを考えている場合じゃない! なんだこれ! どうしてうちの寮に暴走族がやってきたの~!?
ささっと出入口を閉め、鍵をかけた。ええと、とにかく警察に連絡を……。
すぐ横の管理人室に入り、固定電話の受話器をとる。そのとき、灯りをつけたのが間違いだった。ここに人がいると教えることになってしまった。
一一0をプッシュする前に、ガシャンと大きな破壊音がして、私は受話器を落としてしまった。