それじゃ、ただの私刑になっちゃうじゃん。前言撤回。やっぱりだいぶ、変なひと。

 それから私たちは、無事に調理を終え、夕食の時間を迎えた。山崎から何を聞いたのか、寮生全員が緊張した面持ちで時間通りに集まったので、私は思わず笑ってしまった。



 それから数週間……。

 土方さんは既に、陰の実力者となっていた。いつのまにか及川氏と話をしたらしく、彼の考えた規則は、そのまま寮の規則となった。

 食堂に飾られた額縁の中に、彼直筆の隊規、じゃなくて寮規がおさまっている。もちろん、毛筆だ。

 最初に山崎を黙らせたことが効いたのか、規則ができてから、荒くれ者の寮生たちが少し落ち着いたような気がする。

 処罰への恐怖で縛りつけるのはよくないと思うけど、ここの荒くれ者たちにはちょうどいいくらいかもしれない。

「土方さん、あとでちょっとお話できますか?」

「おう、こっちの仕事が終わってからな。それまで課題やってろ」

「はい」

 トイレの掃除をしていたら、ある寮生がひょっこりと顔を出した。湊の友達の真面目な子だ。

 彼は子供たちの相談役としての地位を確立していた。進学を目指す真面目な子ばかりではなく、退学寸前まで悪いことをした子の人生相談にものっていた。

 とにかく彼は、荒くれ者の対応が上手かった。他の職員では正直怖くて手が出せなかった山崎みたいな子にも、平等に指導をする。