二人部屋にしてあるのは及川氏の指示で、脱走した子がいてもすぐに気づけるようにするため。自殺抑制の意味もあるらしい。
土方さんはいじられても嫌な顔をせず、ハンバーグのタネをすべてが同じ大きさになるよう計り、さっさとまとめていく。
「手つきがいいですね。ねぎの切り方といい。今までも料理はしてたんですか?」
「いいや、特にはしていない。が、やってみると面白いものだな」
彼は頭の回転が速いのか手先が器用なのか、何をやらせても要領よくやる。こういう旦那さんがいればいいなあ……なんて一瞬考えてしまったけど、よく考えたらこのひと幕末の人斬りだったわ。
天板にハンバーグを乗せ、業務用オーブンに入れる。焼きあがるまでは片付けと、副菜の準備をしなくては。
私たちは黙々と作業をしていた。そのとき、食堂の隅から話し声が聞こえてきた。
「おう、お前また課題やってんのか。毎日よく飽きねーな」
ふと顔を上げると、湊の周りを三人の寮生が囲んでいた。どれもこれも、ガラが悪い子たちだ。一番背が高いのが、山崎。
「うん」
相手を刺激しないようにか、短く返事をした湊。それで会話が終わると思いきや、そうはいかなかった。
「ちょっと見せてみろ。俺が丸つけしてやるよ」
ぱっとノートを取り上げられた湊の手が、空を切る。山崎が、湊のノートを持ち上げた。
「返せ!」