「いつかバチが当たればいいのに……」

 小声で呟いた時、強い光が目をくらませた。すぐに鼓膜が破れるかと思うくらいの轟音が寮全体を揺らした。

「ひいいいいい」

 慄いた私は、膝を抱えてその場にうずくまった。まるで爆弾が至近距離で落ちたかのような衝撃だった。

 そのまま身を震わせていると、すぐに静けさが戻ってきた。代わりに、外から微かに強く吹きはじめた風の音が聞こえてくる。

「今、近かった。絶対に近かったよ……」

 光の強さ、音の衝撃、共に今まで感じたことがないくらい強かった。近くに落ちたに違いないと思ったけど、廊下の灯りは消えずに私を照らしている。

 停電していないということは、それほど至近距離で落ちたわけでもないのかな?

 ホッとして立ち上がると、廊下の窓から裏庭に人が通っていくのが見えた。

 寮生かと思い、窓に近づいて確認しようとすると、突然強い雨が降りだした。風は荒れ狂い、窓を小刻みに揺らす。

「台風来ちゃったじゃない!」

 玄関からさっきの人影が入ってくるだろうと思ったけど、なかなか開かない。いったい何をしているのか。

 放っておけばいいとも思うけど、どうしても気になる。こんなときに外に出る理由があるだろうか。見間違いだったならいいけど。

 仕方なく、職員用の雨合羽を管理人室から持ち出し、しっかり着こんだ。これだけ風が強いと、傘は役に立たない。