彼は私を見つめ、表情を凍りつかせた。
「ってことは、江戸幕府は潰れちまったってことか……」
「ええ、そうですね。今の日本に幕府はありません。将軍も武士もいません」
「ちょっと待ってくれ」
とうとう頭を抱えた土方さんは、目を閉じて丸くなってしまった。途方に暮れた子供のように、動かなくなる。
その間にささっと調べたが、新選組は幕府側の組織だったらしい。主に京都の治安維持が全盛期の仕事だった。
彼らは京都の不逞浪士と呼ばれる人たちの取り締まり……今で言う警察官のような仕事をしていたらしい。ただ違うのは、新選組も不逞浪士も刀を持ち、度々斬り合いをしていたということだ。
結局、時の流れに勝てなかった新選組は、木戸孝允や西郷隆盛率いる新政府軍に負けた。
土方さんは戊辰戦争など、幕府が政権を放棄してからも新政府軍と戦い続け……北海道まで北上し、最後は函館で戦争中に命を落とす。
「あの……もしかして、本当に土方歳三さんなんですか?」
じゃなければ、幕府がなくなったと聞いただけでこんなにへこまないだろう。現代人なら、消費税を上げられる方がよっぽどへこむ。
それに、写真の土方さんと目の前の土方さんはそっくりだ。近くで見ても化粧っけがないので、コスプレメイクではないはず。