「それにしても、似てますねえ。すごい」
「その機械はなんだ?」
「ああ、はい」
私は彼の写真を表示したスマホを差し出した。写真の中の彼は着物姿ではなく、髪を切り、軍服のような格好をして、ブーツを履いている。昔にしてはモダンな着こなしだったのではないかと思われる。
「なんだこれは!」
「スマホです」
「俺が……ホトガラに……それがこのちっせえ箱の中に……」
ホトガラ……ああ、フォトグラフィー、すなわち写真のことか。
「あのう、今の年は答えられます?」
「元治元年だろう」
よどみなく答える彼に、不安に似たモヤモヤを感じた。もしや、本気で言っているのか?
「今、令和二年です」
「令和?」
私は彼の手の中にあるスマホを指先で操作し、日本の歴史年表を検索して表示した。彼は始終目を見開き、信じられないものを見る目つきをしていた。
「ここがあなたの言う幕末。今ここだから……だいたい百五十年ちょっとの開きがあります」
「幕末……?」
「江戸幕府末期。江戸時代の終わりです」