いつもは用がないので通り過ぎる店から、カタカタカタという軽快な音が聞こえてきて、窓から中を覗くと店主が白い布をミシンで縫っている。

 繕い物はよくするけれど、もちろんミシンなんて使った経験がない。
 どういう仕組みになっているのか興味津々。

 私は店主の作業をたっぷり観察したあと、移動した。


 次に目に入ったのは籠(かご)屋さん。
 ここでは一度籠を買ったことがある。
 その店頭で店主が見事な手つきで籠を編んでいく様子をじっと見つめる。


「いらっしゃい」
「あっ、ごめんなさい。客じゃないんです。おじさんが編んでいくのが速くてびっくりして」


 客ではないと言ったのに、店主は嫌な顔をせず対応してくれる。


「もう慣れてるからね。やってみるかい?」
「いいんですか!」


 うれしくて声が上ずる。

 それから手ほどきを受け、少しだけ編ませてもらった。