声に出しはしないが、人間観察に心躍らせる。

 制帽に詰襟、そして金ボタンの学生服を着て、背筋をピンと伸ばして歩くふたりの男性は、私よりもずっと背が高い。
 きっと帝国大学生だ。

 ということは、上流階級の人だろう。

 私と同じ海老茶色の袴をはいた女学生――海老茶式部もちらほらいる。

 女学校に行けるのはほんの一握りの選ばれた人間だけの特権だ。

 その権利があるかどうかは、生まれ落ちた瞬間に決定する。
 家柄の良し悪しがすべてだった。


 それから街中を歩き始めると、たくさんの商店に目を奪われる。

 いつも言いつけられた買い物にはやってくるものの、時間が限られているためお目当ての店に一直線。こんなにゆったりと歩いたことはない。


「あっ、洋服の仕立て屋さんだわ。ミシンよね、あれ」