けれども彼のためを思えば、今後は初子さんに世話を頼んだほうがいい。


「私は尋常小学校を卒業したら、もう学校には行かないの。もうすぐ卒業でしょう? そうしたらこうして一緒に通えなくなるのよ」

「初子さんみたいに、高等小学校に行かないの?」

「そうね。行かない。まつのように働くの」


 昨日の今日で決めたことだが、決して一時の気の迷いではない。

 娘として認められないのならどうすべきか。
 私は必死に自分の居場所を探していた。


 孝義は私の言葉の意味が呑み込めないようで、顔をゆがめている。


「孝義は、子爵の称号をお父さまから継ぐのよ。しっかりしなさい。ほら、先生がいらっしゃるからもう行きなさい」


 複雑な表情の孝義を見送る私は、「よし」と気合を入れ直した。




 それから私は、女中と一緒に働き始めた。

 学校から帰るとまずは廊下を雑巾がけ。