それに父も気づいたが、なにも言わない。
 元来、家族というものに関心が薄い人なのだ。

 そして母からも声をかけられることはなかった。



「行ってまいります」


 初子さんと孝義と一緒に学校に向かう私は、いつもと変わりなく笑えていた。


 昨日、母に知らされた事実はたしかに衝撃的で、平気だと思っていたのに、昨晩はこっそり布団の中で涙を流しもした。

 しかし、ずっと叩かれ続けてきたわけがわかり、胸につかえていたものが取れてすっきりもした。

 初子さんと同じ行動をしても自分だけが叱られるのがずっと納得できず、苦しかったからだ。


 高等小学校に通う初子さんとは途中でお別れ。
 私は孝義の手を引き、話しかける。


「孝義。これからは初子さんを頼るのよ」
「どうして?」


 まだあどけなさの残る孝義は、なにかと世話を焼く私のことが好きらしく、懐いていてすごくかわいい。