「なにって仕事です。食事を作るのは無理でも、運ぶくらいはできるのよ」

「まだお母さまのおっしゃったことを気にしているのね? あれはお父さまのせいで虫の居所が悪かっただけよ」


 たしかにそうかもしれない。
 でも、遅かれ早かれこういう日がやってきた気がしてならない。


「初子さん、大丈夫。私、ウキウキしてるんです。誰かのために働けるって楽しいのよ。心配しないで」


 ウキウキしてる、というのは少し大げさだった。
 この先の不安がないと言ったら嘘になる。

 でも、もともと体を動かして働くのは嫌いではない。なんとかやっていけると思う。


「あやのそういう前向きなところ、好きだけど……」

「ありがとう。私も初子さんのこと好きよ」


 私は笑顔で仕事を続けた。


 食事を運び終えたあと、家族のいる大広間ではなく、女中と一緒に朝食を食べた。