父は母の美しい舞に魅せられたのかも……。


 まつの話を聞いた私は、ぼんやりとそんなことを考えていた。



 翌朝は早起きをして、朝食作りをしている女中のところに行き、まずは仕事を観察していた。


「あやさま、よろしいんですよ。学校に行く準備をなさってください」


 まつに促されたけれど、娘として愛されないならば女中としてでもいい。
 十分な働きをして認められたいと決意していた。

 母に褒められたい。初子さんのように。

 自分を生んだ母ではないとわかり、それゆえ、虐(しいた)げられていたと知っても、母は母だった。


「学校は行きます。でも、まだ時間はあるでしょ」


 私は女中が作った食事をお膳にのせ、大広間に運び始めた。
 そこに集まって朝食をとるからだ。

 けれども、その様子を見た初子さんが目を丸くして飛んでくる。


「あや。なにしてるの?」