「初子さん、ありがとう。でも私、そもそも生きている場所が違っていたのかもしれないわ。それより、芸妓ってなにかしら?」


 どうしてこれほどまでに冷静でいられたのか、自分でもわからない。

 もしかしたら、母の子ではないかもしれないという疑いを、知らず知らずのうちに心の中に抱いていたのかも。


 今はただ、自分は何者なのかを知りたいと思っていた。


 妾という意味はなんとなく知っているが、芸妓については知らない。

 尋ねてみたものの、初子さんにもわからないらしく答えは返ってこなかった。


「あやさま。あやさまのお母さまは、それはそれは舞踊が上手な方でいらっしゃったんです」


 代わりにまつが答えてくれた。


「舞踊が……。それは素晴らしい」


 舞踊ということは、母も上流階級の人だったのかしら。

 父くらいの歳の人たちには妾がいるのは珍しくないと聞いたことがある。