母は、ずっと私には冷たかった。

 食事の作法を初子さんが間違えても、言葉で注意されるだけ。

 しかし私には容赦なく手が飛んだ。ときには、箸をうっかり落としただけで顔が腫(は)れるほど叩かれた。


 他にも……初子さんにはどんどん新しい着物が与えられたが、私は初子さんの着古しばかり。

 次女だから仕方がないと思っていたけれど、おそらくそれが理由ではなかったのだろう。


「ううん。これはあやのものよ。私、意地悪したわ。この前は私が食べたんだもの、今回はあやの番。あやは私の妹なんだから。いい? あなたと私の関係は変わらないのよ」


 初子さんと私は、こうしてつまらないことで喧嘩をするとはいえ、とても仲のいい姉妹だ。

 常に一緒に行動して、同じ遊びをし、大切なものは分け合ってきた。


 だからだろうか。
 初子さんのほうが動揺して、焦点が定まっていないように見える。