凄(すご)まれて意気消沈したまつは、うつむいた。


「妾……」


 そんなことは初耳だったので、呆然としてなにも言えない。

 母は、怒りの形相のまま部屋を出ていった。


「私……お母さまの子じゃないの?」


 ポツリと漏らすとまつは顔をそむける。
 つまり、嘘ではないのだろう。


「あや、お団子食べていいわよ」


 初子さんは気遣ったのか、団子ののった皿を私に持たせた。


「ううん。これは初子さんのお団子よ。私は、初子さんとは違うんだって」


 冷静に言葉を紡ぐと、彼女は顔をゆがめている。

 でも、不思議と怒りや悲しみという感情が湧き出てくることはなかった。
 それどころか、今までのもやもやがストンと晴れた気がして、妙にすがすがしい気分だ。

 そっか。私は歓迎されて生まれてきた子じゃなかったんだ。
 お母さまに愛されるわけがないんだわ。