心臓がバクバクと音を立てて暴れ回り、自分ではどうすることもできない。

 あの優しい笑みが頭にこびりついて消えてくれない。


 初めての感覚に首をひねりつつ、試しに時計の蓋(ふた)を開けてみると、中にはなにやら文字が刻まれていた。
 けれども英字なので、なんと読むのかわからない。


「あや、遅いわよ」


 そのとき、神社の境内から初子さんの急(せ)かす声が聞こえてくる。


「ごめんなさい」


 私はとっさにその時計を胸元に隠し、初子さんのもとへと走った。