しかしスッと手のひらを差し出されて、目をパチクリさせる。

 もしかして、握れと?

 人力車くらい、いくら袴をはいていたとしても、ひとりで乗り込めるのに。

 そう思ったけれど、もしかしたら女学生にとってはこれが普通なのかもしれないと、おそるおそる手を伸ばす。


「あはは、なんだか変わったお嬢さんだね。こんなことくらい、いつもしているだろう?」


 やはり、そういうものなのね。


「そ、そうですわね」


 必死に平然とした顔を作って手に手を重ねると、思いがけずギュッと握られて目が真ん丸になる。

 初子さんたちはこれが日常なのよ。
 動揺しちゃいけないわ。

 必死に自分に言い聞かせてみたものの、鼓動が速まるのを止められない。

 一方彼はずっとクスクス笑っていて、なんだか楽しそうだ。


「それでどこに行くんだい?」
「神明(しんめい)神社に」