一橋家が華族ともてはやされても、それは所詮家柄の話で、自分の努力の結果とは違う。

 日々食事ができて着るものを与えられていることも然り。
 私自身が働いて得た対価で購入したものではないので、当然だと受け取ってはいけないと思っている。

 ただし、私は最低限の生活が保障されていることについて感謝しているのであって、おそらくこの身なりの整った紳士が考えているような次元ではない。


「きみの言う通りだ。俺も商売をしていてそれなりに稼がせてもらっているけど、従業員の頑張りがあって初めて成り立っている。そうしたことに感謝して、おごり高ぶることなく地に足がついた生き方をしたい」


 柔らかな笑みを浮かべてそう口にする彼は、従業員を抱えるような超上流階級の人なのだとわかった。

 しかしそんな人が、私の気持ちに共感するとは驚きだ。