朝食を食べ終えた悟は、携帯電話を手に持ち、インターネットの検索画面を開いた。なぜ烏と話せるようになったのか、を調べるためである。

心当たりがあるとすれば、交通事故に巻き込まれたことくらいであるから、それが原因ではないかと悟は事故に遭った当初を思い出す。車にはねられ、コンクリートに頬をつき意識を飛ばす直前に烏に話しかけられた場面が目に浮かんだ。

そして、烏と会話できるようになったことに対しては、一種の超能力のようなものだろうかと悟は考えた。

検索画面に『事故 超能力』と入力した。

すると、病気、事故、臨死体験により超能力が開花することがあると記載されていた。

臨死体験については、動物園の猿が病気で臨死に至ったものの奇跡的に生還したが、以降、人間のように直立した二足歩行を使い熟すようになったと大きな記事として取り上げられている。悟の場合、臨死体験に含まれるかどうかといえば、なんともいえないところである。

次に、『烏と話す』と検索すれば、"烏がしゃべった"、"カラス語"など烏が話すことについての記事ばかりであり、手がかりは見つからなかった。

首を捻って悟は考える。


烏って、ピンポイントにするから出てこないのか?


そして、『動物と話す』と入力し直し検索すれば、動物と話せる能力をアニマルコミュニケーション、またそれを操るものたちのことをアニマルコミュニケーターというらしいが、それは超能力ではない、ということがわかった。また、アニマルコミュニケーションスクールといった養成所もあるようだ。

しかし、悟の場合は───

「……! ……あ! なあ、悟!」
「ん?」

病室の窓のふちに立って悟を呼び続ける声に、携帯電話の画面から烏へと視線を移して、悟は首を傾げた。

「ったく、さっきから呼んでるってのに」
「ごめんごめん」

アニマルコミュニケーターは動物とのアイコンタクトが必要であると記事に書いてあったのだが、悟にはそれを必要としない。それがなくとも、人間に話しかけられるのと同様に声が聞こえてくるのである。

この時、悟は自分が一般的なアニマルコミュニケーターとは異なり、超能力者としてのアニマルコミュニケーターになったのではないかと考えていた。