翌朝、昨日の夜からの重い気持ちを抱えたままリビングへと向かう。晩ご飯を食べそびれたせいでお腹がすいて仕方がない。
 夜中にこっそりとシャワーだけは浴びたのだけれど、明かりのついたリビングに行くことはできなかった。顔を合わせて小言を言われるのも嫌だったし、何よりも泣きはらした目で両親に会いたくなかったから。
 そっとリビングのドアを開けると、まだ誰も起きてはいないようだった。パンとそれから牛乳でも飲もうと冷蔵庫を開けた私は、お皿に載ったハンバーグがラップをかけられてあるのに気づいた。きっと私の晩ご飯だろう。……でも、それを手に取ることなく、グラスに牛乳を注ぐと冷蔵庫を閉めた。

「おはよう」
「……おはよう」

 いつの間に起きてきたのか、リビングに入ってきたお母さんが私に声をかけた。なんとなく気まずくて私は飲み終えたグラスを流し台に置くと、お母さんのそばを通り過ぎる。

「朝ご飯は?」
「いらない。今日、日直だからもう行くね」
「そう。気をつけてね。……あ」

 何か言いかけたお母さんの言葉は聞こえなかったふりをして、私はリビングのドアを閉めた。
 どうせ何を言うかなんてわかっている。「今日こそは、ちゃんとお姉ちゃんのところに行ってきてね」だ。お姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃん。もうウンザリ。
 だから私は、この日学校が終わるとまっすぐにレイ君の元へと向かった。

「……何、その驚いた顔」

 夕日が山の向こうに沈みかけた頃、鉄橋を訪れた私にレイ君は意外そうな表情を向けた。自分が「また明日」と言ったのに、まるで来ると思わなかったとでもいうようだった。

「いや、その本当に来ると思わなくて」
「ふふ」
「なに?」
「なんでもない」

 思った通りの答えに思わず笑ってしまう。レイ君の隣に並ぶと私は背後に見える病院から目を背けるようにして鉄橋の柵に寄りかかった。それ(病院)を視界に入れると、どうしても心臓が苦しくなる。聞こえるわけないのに、私を責める声が聞こえてくる気がする。「なんて薄情な」「お姉ちゃんのことが心配じゃないの」って。
 だから、そのあとのレイ君の言葉も私の心を重くさせるものでしかなかった。

「今、学校の帰り?」
「……そうだけど。どういう意味?」

 頭の中が冷たくなるのを感じる。それとともに、自分の声が固くなるのも。
 病院に行ってきたのかと聞きたいのか、それとも病院に行かずにここに来たのかとでも言いたいのか。どうしてそんなこと言われなきゃいけないのと思うと同時にここに来たことを後悔した。
 お姉ちゃんの妹としての私じゃなく、ただの二葉としての私を見てくれるなんて幻想でしかなかったのだ。お姉ちゃんが入院していることを知った時点で、私はそんなお姉ちゃんを放ってここに来ている最低な妹としてしか思われないってわかってたのに。
 でも、そんな私の問いかけにレイ君は特に何でもないように言った。

「こんな時間まで授業なら大変だし、そうじゃなくて通学時間が長いのならそれはそれで大変だなって」
「……授業終わってからどこか行ってたとか、何かしてたとか思わないの?」
「そうなの?」
「違うけど……」

 そんなこと考えもつかなかったと言わんばかりのレイ君の言葉に、少しだけピリッとした気持ちが緩むのを感じた。

「学校が終わってからそのまま来たよ。今日は六時間目のあと補習授業もあったから実質七時間授業のようなもんだし」
「七時間……。勉強好きなの?」
「好きでも嫌いでもない。でも、お姉ちゃんが通っていた学校だから、私もそこに進学したってだけ」

 私が通うのは多少欠席が多くても、単位さえきちんと取れていたら進級・卒業ができる地元から少し離れたところにある私立高校だ。
 他に行きたいところがあったかと聞かれても困ったけれど、そんなこともなく、まるで最初から決まっていたかのように「二葉もお姉ちゃんと同じところに行くわよね?」と言われてしまうと、私に拒否権なんて存在しないかのようだった。
 休みがちだったお姉ちゃんの代わりにお姉ちゃんの分まで高校生活を満喫してほしい、なんて言葉が笑顔のお母さんから聞こえてくる気がした。

「いい子だね」
「え?」
「だって、わざと受験に失敗することだってできたじゃん」
「そんなこと、考えたこともなかった」

 レイ君の言葉に驚きを隠せなかった。そんなこと考えたこともなかったし、思いつきもしなかった。でも、そっか。たしかにそうだ。私は逃げようと思えばいくらでも逃げられたんだ。その選択肢を自分自身が選ばなかっただけで。

「結局、私自身の選択だったってことじゃない」
「それは二葉が優しい子だからだよ」
「どういう意味?」
「自分の気持ちよりもお姉ちゃんの気持ち、お母さんの気持ちを優先してあげられる優しい子だってことだよ。でも、もうそろそろ自分の気持ちをもっと大事にしてあげてもいいと思う」

 レイ君の口調は、泣きたくなるぐらいに優しかった。

「だから、今ここにいる自分を責めなくてもいいんだよ」
「っ……なんで」

 わかったの、と聞きたかったのに言葉にならなかった。そんな私にレイ君は微笑む。うっすらと透けた向こうに、お姉ちゃんのいる病院が見えた。

「二葉は二葉であってお姉ちゃんの代わりじゃない。お姉ちゃんのためになんて生きなくていいんだよ」
「……死ぬためにここに来てるんだけどね」
「だとしても、それは二葉の意志だから」

 わざと嫌みな言い方をした私に、レイ君は全然気にしてなさそうな笑顔を浮かべて言った。どういう意味かと見つめ返した私に、レイ君は優しく微笑む。

「二葉が二葉の意志として行動することは大事なことだと思うよ。それがどんなことであれ」
「私が、私自身の意志で」
「そう。例えば、二葉が買いものに出かけた先でとっても可愛いワンピースを見かけたとする。それを二葉は買う?」
「買わない」
「それはどうして?」

 反射的に答えた私に、レイ君は問いかける。どうして? そんなの決まっている。だって――。

「お姉ちゃんが、着られない、から」
「お姉ちゃんが着られないと、どうして二葉が買っちゃ駄目なの?」
「だって、お母さんが、悲しそうな顔を、する、から」

 自分の答えに、ショックを受けた。そうだ、レイ君が言っているのはこういうことなんだ。
 私の中に染みついた、お姉ちゃんのため、お母さんの顔色をうかがうこと。それが私自身の答えかのように思い込んでしまっている。

「もう一度考えてみて。二葉はワンピース嫌い?」
「……可愛いと思う」
「着たことは?」
「ほとんど、ない」
「着てみたいって思う? 思うよね。だから今、そんな顔してるんだよね」

 レイ君の目に映る私はいったいどんな顔をしているんだろう。必死に涙がこぼれるのを堪えている私の顔は――。

「二葉は優しすぎるんだよ。嫌なものは嫌だって、好きなものは好きだって口に出していいんだよ」
「でも、それでお姉ちゃんが、お母さんが傷ついたら」
「じゃあ、二人が傷つかないために二葉が傷つくのはいいの? 二葉が二葉自身を守らなかったら、誰が二葉のことを守ってくれるの?」

 もう、我慢できなかった。
 必死に堪えていた涙が次から次へとこぼれ落ちる。でもレイ君の言葉を認めるのが悔しくて口からついて出るのは可愛げのない憎まれ口だった。

「レイ君が、私の、何を知ってるって言うのよ……」

 そんな私をレイ君は包み込むように抱きしめた。触れることも体温が伝わることもない。ただ伝わってくるのはレイ君の優しさだけ。

「俺はなんにもしらない。でも、今二葉が辛いってことだけは出会ったばかりの俺にだってわかるよ。……ね、二葉。ここにはお姉ちゃんもお母さんもいないんだ。二葉の本当の気持ちを言ったって咎める人は誰もいないんだよ」
「っ……私、本当は仲のいい友達と一緒に公立の学校に行きたかった。私立の、それもお姉ちゃんと同じ学校になんて行きたくなかった。みんなと一緒の制服を着て、放課後はバイトとかカラオケに行って、普通の高校生みたいなことしたかった。服装だってそう。ジーパンよりもワンピースが好きだし、可愛い女の子らしい服が着たい! 今の私は全然私らしくなんかない!」

 最後はほとんど叫んでいるみたいだった。こんなふうに気持ちを口に出すことなんて今までなかった。考えちゃいけない、思っちゃいけないってずっと思ってた。私がそう思うことでお姉ちゃんやお母さんに辛い思いをさせることが一番悪いことだと思ってた。それで私が傷ついたとしても。なのにレイ君は私自身の感情に素直になっていいと言う。でも、それは。

「そう思うのは、悪いことじゃない、の?」
「それは二葉が二葉らしくいるために必要なことなんだよ。だからこれっぽっちも悪いことじゃない。自分の気持ちをもっと大事にしてあげて。そうじゃないと、どんどん傷つくことに慣れて、心が壊れちゃう」
「心が……」
「そう。誰かに優しくするのと同じぐらい、自分にも優しくしてあげてもいいと俺は思うよ」

 そっと私から身体を離すとレイ君は言う。レイ君の言葉は、まるで今まで凍り付いていた私の心を溶かしてくれるかのように温かかった。きっと私は誰かにこんなふうに言ってもらいたかったんだと思う。それが出会ったばかりの幽霊というのは皮肉な話だけれど、でもそれでも嬉しかった。

「……生きてるときに、出会えてたらよかったのに」

 ポツリと呟いた言葉に、レイ君は少し驚いたような顔をしたあと、寂しそうに微笑んだ。

「二葉はまだ生きてるじゃない」
「……そうだったね」

 私の言葉の意味がわからなかったわけじゃないだろうに、レイ君がそう言うから……私は苦笑いを浮かべることしかできなかった。
 そっと隣に並ぶレイ君の顔をのぞき見る。夕日が透けたレイ君の笑顔は、とても綺麗で、とても悲しげだった。


 その日、家に帰った私はお母さんに何かを言われる前に自分の部屋へと入った。制服を脱いでクローゼットにかけるために扉を開けて目に入った服を手に取った。
 私の好みとはほど遠いジーンズにTシャツの数々。着たくないと思いながらも私のクローゼットにはそれしかない。結局諦めてこれらを着るしかないんだ。

「……違う」

 そうじゃない。それだと、今までとなんにも変わらない。
 クローゼットに背中を向けると、私は勉強机の引き出しに入ったままになっていた通帳を取り出した。今までのお年玉やお小遣いが入った通帳。死んでしまったらこれを使う機会もないままだ。それなら、このお金で最期に好きなものを買ったっていいじゃない。本当に欲しいものを、したいことをしたっていいじゃない。今までこんなにも我慢してきたんだから。
 翌日、私は学校が終わると、持ち出した通帳からお金を下ろすと駅前の服屋さんへと向かった。今まで行きたいと思っても一度も行けなかった女の子らしい雰囲気の可愛い服が売っているお店。ずっと興味ないふりをして、歩道に面した窓にディスプレイされた服を見るだけだった。でも、今日は……!


 いつもとは違う服装にどこか気恥ずかしさと照れくささを感じながらも、足取り軽く鉄橋へと向かった。
 コツンコツンとアスファルトを鳴らす足音さえいつもより浮かれている気がする。レイ君はどんな反応をするだろうか。似合ってるって言ってくれるかな。もしかして可愛いなんて言われるかも知れない。
 そんな甘い考えが頭をよぎるほど、新しく買った服に心を躍らせていた。でも、鉄橋が近づくにつれドキドキは不安になり、マイナスの感情に襲われていく。そして、それは鉄橋に近づいた瞬間、現実のものとなった。
 ほとんど車が通ることない土手を一人歩く。右手に鉄橋が見えて、橋の一番奥の定位置にレイ君はいた。でも、レイ君は私に気づくことなくボーッとどこか遠くを見つめ続けている。いつ気づいてくれるだろう、いつ気づかれるだろう。ドキドキと不安が混じったまま歩き続けた。けれど結局、気づかれることはないまま橋のたもとへとたどり着いてしまった。

「あ……」

 その瞬間、レイ君がこちらを向いた。
 でも、レイ君は――私を見ても何を言うわけでなく、まるでそこに私なんていないかのように視線をそらした。
 その仕草に、私の心が冷たくなるのを感じた。 ショック、よりも苛立ちを覚えた。昨日はあんなこと言ってたくせに、本当に私が着てきたらこんな態度を取るなんて。

「レイ君!」

 だから私は、わざと大きく足音を立てながら鉄橋を歩くと、苛立ちを込めた声でレイ君を呼んだ。私の声に、レイ君は少し驚いたような表情を浮かべてこちらを見る。そして。

「へー」  
「なに」
「いや、似合うなって思って」

 小花が散ったスミレ色のワンピースと白のカーディガンに身を包んだ私を、レイ君はジロジロと見てくる。さっきまであんなに怒っていたはずなのに、レイ君に見られただけで恥ずかしいなんてどうかしてる。でも、レイ君の視線が妙に恥ずかしくて、そして先ほどまで苛立ちを感じていたくせにこんなにもドキドキしてしまう自分が腹立たしくて私は顔を背けると、ふんと鼻を鳴らした。

「嘘ばっかり。ホントは似合ってないって思ってるんでしょ」
「なんで嘘つくのさ。よく似合ってるから似合ってるって言ってるんだよ。昨日来てた制服よりもずいぶんと二葉らしい」
「……ホントに?」
「本当だよ。自信を持って。そっちの方が、俺は好きだよ」
「すっ……!」

 レイ君の言葉に、思わずドギマギしてしまう。けれど、そんな私をレイ君はなんにも考えていないような顔で「ん?」と言ってこちらを見る。その姿に私は肩をすくめた。

「なんでもない! ……ありがと」

 私らしいと言ってくれたレイ君の言葉が嬉しくて、私は素直にお礼を言った。そんな私をレイ君は笑顔を浮かべて見つめている。
 その笑顔がなんだか悔しくて、私はわざとらしく笑顔を浮かべた。

「っ……でも、そんなこと言って私だって気づかなかったんじゃない?」
「どういうこと?」
「まあたしかに? 見違えちゃったから気づかなかったのも無理ないかも知れないけど」
「だから何の話?」
「……さっき、私がレイ君の名前を呼ぶ前に目が合ったのに気づかなかったでしょ? だから」

 こんなことを言ってしまうなんて私は意地悪だ。気づかなかったものは気づかなかったんだから仕方ないじゃないか。そう思う心と、それでも気づいてほしかったという気持ちがせめぎ合う。けど、自分でも不思議に思う。今までならきっと気づかれなかったのも目をそらされたのも仕方ないで済ませられていた。私なんかに気づかなくても仕方ない。私なんか、私なんてって。なのに、レイ君にはそう思われたくないと、そう思うのはどうしてだろう。
 けれどレイ君はそんな私の気持ちなんて知るよしもなく、キョトンとした表情を浮かべながら首をかしげた。

「目、合った? いつ?」
「鉄橋のたもとあたり」
「あー、もしかしてそのとき二葉って土手の方にいた? 鉄橋の上じゃなくて」
「え? あ、うん。たしかそうだったと思う」

 そんな些細な違いがなんだと言うのか。そう思いつつも、つい素直に頷いてしまう。そんな私にレイ君は申し訳なさそうな表情を浮かべた。
 
「そっか、じゃあごめんね。見えてなかったんだと思う」
「でも、私の方からレイ君の姿は――」
「俺、この橋の向こうにいる人のこと見えないんだ」

 レイ君は私の言葉を遮ると困ったように笑った。

「どういう意味?」
「そのまんまの意味だよ」
「バカにしてる?」

 私からレイ君が見えていたのに、レイ君から見えていないなんてそんなことあるわけがない。嘘をつくならもう少しマシな嘘をついてほしい。そうしたら二回も傷つかずにすんだのに。
 そこまで考えて、私は気づいた。先ほどのレイ君の行動に、私は傷ついていたんだと。レイ君に無視されて、傷ついたんだ。そして今、こんな見え透いた嘘をつかれて。
 だから悲しかったし腹立たしかったんだ。出会ってまだ数日しか経っていないのに、思った以上に私の中でレイ君の存在が大きくなっていたことに驚く。
 でもレイ君はそんな私に首を振ると諭すように優しく言った。

「バカになんてしてないよ。そのまんまの意味さ。この橋の向こうを歩いている人の存在を俺は認識することができない。景色の中にもやがかかったみたいになってて誰がいるのかわからないんだ」
「ホントに? どうしてそんな……」
「わからない。でも、俺が認識できるのはこの橋の上にいる人だけなんだ。橋の向こうにいる人のことは気づくことすらできない。そして、ここから出て行こうとしても見えない壁のようなものに遮られる。ここに閉じ込められてるようなものだね」  

 レイ君の言葉に『地縛霊』という単語が思い浮かんだ。死んだ場所から動けない霊。レイ君はそれなのかもしれない。だからこの橋から動くこともできなければ、橋の向こうに干渉することもできないのかもしれない。
 
「幽霊の俺と、生きている人を遮る壁なのかも知れない。本来ここに存在しちゃいけない俺を遮るための」
「じゃあ、私がこの橋から出て行ったらもう私のことは見えないってこと?」
「そういうこと」

 そんなことあり得るんだろうか。……でも、レイ君が嘘をついているようには見えない。と、いうかあり得るあり得ないでいえばレイ君の存在がそもそもあり得ないんだから考えたって仕方がないのかも知れない。

「だから橋の向こうから二葉が手を振ってくれたとしても、俺には見えないんだ」
「そっか。……レイ君に無視されたのかと思っちゃった」
「俺が? 二葉を? そんなことするわけないじゃん」

 ふっと笑うレイ君の笑顔に、優しさにほんの少し胸が高鳴るのを感じる。その口調があまりにもそうするのが当たり前のようで、それ以外の答えなんてないというように感じられて……それが凄く嬉しかった。
 レイ君はどうしてこんなにも私がほしい言葉をくれるのだろうか。――その言葉をかけてほしかった人たちは、決して与えてくれなかったのに。

「レイ君は優しいね」
「そうかな? 前にここで会った人には『君は今まで出会ったどの人間よりも冷たい』って言われたよ」
「え……?」
「なんでもない。ああ、ほらもう日が暮れるよ。だんだんと日が暮れるのが早くなってきたね」
 山の向こうに沈み始めた太陽はどこか寂しげに見える。そして、その光に照らされたレイ君の顔も。

「……明日も来ていい?」

 思わず、そう呟いていた。
 私の言葉に一瞬驚いたような表情を浮かべた後、レイ君は嬉しそうに「待ってる」と言って微笑んだ。
 私以外のために回っていると思っていた世界で、私のことを見つけてくれたレイ君。死ぬまでの間、彼と過ごすのも悪くないと、改めて私はそう思った。