もしかしたら、やっぱり人間の保育士なんて嫌だと言われてしまうかもしれないとすら思う。だがそんな風に覚悟しているのぞみに、こづえから出た言葉は、意外なものだった。
「…いや、こっちこそ、申し訳なかったよ。怒鳴ったりして。あんたは、人間なんだから分からなくて当然のこともあるだろうに」
「こづえさん…」
 のぞみは言葉を失って彼女を見つめる。
「紅さまの言う通り、あんたはかの子をよく見てくれているようだ。あの子が…他の子に混ざって遊べるようになったのはあんたのおかげだと、口裂けが言ってたよ」
 思いがけず優しい言葉をかけられて、のぞみの視界が滲んでゆく。
「あの子が他の子と遊べないのは、私も気にしていたのさ。あやかしの世界では子どもたちが仲良しこよしする必要はないけれど、あの子は座敷童子だ。友だちを作れないようじゃおまんまは食えないからね。それに、私がかの子に寂しい思いをさせていたのも事実だった。『座敷童子は片親だからろくに"ぞぞぞ"を食べさせられてないんだろう』なんて言う連中を見返してやりたくて、少しばかり意地になっていたようだ。今日、あんたのアパートへ行けないと知ったかの子に泣かれて気がついたよ。もう何十年も母親をしてるのに、情けないよ」
 そう言ってこづえは首を振った。