そもそもさっき、死期がわかることについては色々偉そなことを語っていたくせに、依頼を取り消したものは公開するのか。なんて悪徳な神使を極めているんだあいつは。
 僕は再び左右のことで気持ちを乱していると、みーこさんは僕らの頭上にある鳥居を見上げながら、こう言った。

「でもあれはそもそも、佐藤さんのためでもあるから掲載したかったんでしょうね」
「僕のため……?」

 どう言う意味だろう? みーこさんの言っている意味が理解できず思わず僕は首を傾げる。するとみーこさんは慌てた様子で「あれっ!?」なんて口を両手で押さえた。

「私てっきりこずえさんから聞いていたんだとばかり思っていました!」
「……? 何をですか?」
「いえ、聞いてないなら私の口からは言えません。人の願いを本人の許可なく勝手に本人に伝えるなんて……!」

 本人に伝える……? あの手紙の依頼主はこずえであり、その中身もこずえの事が書かれていたのだろう?
 でも待てよ。本人(こずえ)の許可なく勝手に本人()に伝える……? そして、こずえの依頼内容は僕のためでもあるって——。

「こずえは、僕の幸せを願ってくれた……?」

 あやかし新聞社の依頼するコンセプトとしては——何かで困ったり、無くしたものを探したい時。
 こずえはそんな内容が書かれたあやかし新聞を読んで、依頼を決めた。ここからはあくまで憶測だが、僕の幸せを依頼としてあの紐に吊るしたのであれば、彼女は幸せの階段を踏み出しながらも、なおかつ僕のことを心配してくれていたのか。
 どこまで情けない話なのだろうか。別れてもなお、元彼女に心配される僕とは……。

「だからお前は小僧だと言うのだ」

 そんな声は突然現れた。
 声は僕らの頭上にある大きな鳥居の上。僕は条件反射の如く視線を上に向けると、そこにはいつもの袴に身を包み、冷淡な表情をした左右がいた。

「お前、また……!」

 また僕のことを馬鹿にして!
 そう思って異論を唱えようとした僕より先に、左右はこう言った。

「お前だってこずえの幸せを願っていたではないか。そんな彼女をお前は情けない女性だと思うのか?」

 ……まるでそれは澄み渡る水のようだった。
 この神社の禊の水のように、淀みがなく、クリアで、僕の中にある汚れを落としてくれるような、そんな言葉だった。