「今日は左右は来ないんですか?」
「みたいです。今回は探し物でもなければ、キヨさんのようにご年配の方に会いに行くわけでもないですから。左右としては結果が出ているのに行く必要はないと思っているようです」
なんてやつだ。どこまでもあのねずみ小僧は生意気なやつだ。
「左右のやつはそんなにも凛花ちゃんが100点取れないと思っているのでしょうかね。小学一年生のテストであれば無理ではないと思うのですが」
「私もそう思うのですが、左右が言うには無理な理由はそっちではないとのことでして……」
「そっちではない?」
みーこさんは気まずそうに手遊びを始める。視線をそこに落とし、指先をいじりながらこう言った。
「たぶん100点が取れても飼えないって意味なんだと思うんです」
「えっ……?」
「なぜか左右も詳しくは教えてくれなかったんですが、どうやらそうみたいです」
……なるほど。それなら凛花ちゃんに問題があるわけではなく、凛花ちゃんのお母さんに問題があるということになる。
100点が取れればみーちゃんを飼っていいと約束をしておいて、100点が取れたとしても飼えないなど、そもそも飼う気なんて毛頭ないのだ。子供が欲しがるものを諦めされせるため、大人が使う常套句だ。
目標が高ければそれだけ達成は難しいことだ。だからこそ、その目標が達成できた際には、きちんと約束を守るというのが大前提だ。人として当たり前のことだ。そんなことでは子供は何をやっても認めてもらえない、頑張ることを諦めてしまう大人になるかもしれないではないか。
「僕たちは先に凛花ちゃんのお母さんと話した方がいいのではないでしょうか?」
凛花ちゃんに状況を聞いて、テストがどんな種類なのか、勉強の進捗具合を聞いて、必要であればポイントを教えてあげればいいんじゃないかと僕は考えていた。
今この瞬間まで。みーこさんから左右の話の詳細を聞くまでは。
「そうなんですけど、ちょっとそこは悩みどころと言いますか……」
「どういうことですか?」
「あやかし新聞は人助けになればと思い、私が始めたんです。左右の神通力もあるし、そもそも人助けがこの神社の由来でもあるので……ですが、解決することが目的でもないんです」
「……と、言いますと?」
みーこさんはいつになく気まずい様子で僕から視線を逸らしながらこう言った。
「解決できないことも世の中にはたくさんあるので、私がそれをどうこうするのはただのエゴなのではないかな。とも思ったりするんです。線引きがなかなか難しいんですけど」
ふーむ、なるほど。そういうことか。
「……私、冷たいですかね?」
「いや、そんなことはないですよ。むしろみーこさんはすごく頑張っていますし」
確かに、今回の依頼はキヨさんの時の探し物とはわけが違う。占い調べるというのは建前だとしても、今回のはそもそもその建前からだいぶと離れた動きをすることになるからだ。
探し物は左右がする。左右が家の中をウロウロして調べる。ついでにみーこさんは過疎が進み孤立しているご年配を心配して見回ってる。いわばパトロールのような役割だ。
けれど今回凛花ちゃんが100点を取れるか取れないか、そして取れないなら取れるようにアドバイスするなら、それは多分占いと同じような役割でセーフだろう。けれどそこから凛花ちゃんのお母さんの思惑が何であれ、依頼外のことをするのはどうしたものかと思っているのだろう。
もしかしたら左右が乗る気でもないのは、左右が見たものが依頼内容以上のものだからなのかもしれない。
「みたいです。今回は探し物でもなければ、キヨさんのようにご年配の方に会いに行くわけでもないですから。左右としては結果が出ているのに行く必要はないと思っているようです」
なんてやつだ。どこまでもあのねずみ小僧は生意気なやつだ。
「左右のやつはそんなにも凛花ちゃんが100点取れないと思っているのでしょうかね。小学一年生のテストであれば無理ではないと思うのですが」
「私もそう思うのですが、左右が言うには無理な理由はそっちではないとのことでして……」
「そっちではない?」
みーこさんは気まずそうに手遊びを始める。視線をそこに落とし、指先をいじりながらこう言った。
「たぶん100点が取れても飼えないって意味なんだと思うんです」
「えっ……?」
「なぜか左右も詳しくは教えてくれなかったんですが、どうやらそうみたいです」
……なるほど。それなら凛花ちゃんに問題があるわけではなく、凛花ちゃんのお母さんに問題があるということになる。
100点が取れればみーちゃんを飼っていいと約束をしておいて、100点が取れたとしても飼えないなど、そもそも飼う気なんて毛頭ないのだ。子供が欲しがるものを諦めされせるため、大人が使う常套句だ。
目標が高ければそれだけ達成は難しいことだ。だからこそ、その目標が達成できた際には、きちんと約束を守るというのが大前提だ。人として当たり前のことだ。そんなことでは子供は何をやっても認めてもらえない、頑張ることを諦めてしまう大人になるかもしれないではないか。
「僕たちは先に凛花ちゃんのお母さんと話した方がいいのではないでしょうか?」
凛花ちゃんに状況を聞いて、テストがどんな種類なのか、勉強の進捗具合を聞いて、必要であればポイントを教えてあげればいいんじゃないかと僕は考えていた。
今この瞬間まで。みーこさんから左右の話の詳細を聞くまでは。
「そうなんですけど、ちょっとそこは悩みどころと言いますか……」
「どういうことですか?」
「あやかし新聞は人助けになればと思い、私が始めたんです。左右の神通力もあるし、そもそも人助けがこの神社の由来でもあるので……ですが、解決することが目的でもないんです」
「……と、言いますと?」
みーこさんはいつになく気まずい様子で僕から視線を逸らしながらこう言った。
「解決できないことも世の中にはたくさんあるので、私がそれをどうこうするのはただのエゴなのではないかな。とも思ったりするんです。線引きがなかなか難しいんですけど」
ふーむ、なるほど。そういうことか。
「……私、冷たいですかね?」
「いや、そんなことはないですよ。むしろみーこさんはすごく頑張っていますし」
確かに、今回の依頼はキヨさんの時の探し物とはわけが違う。占い調べるというのは建前だとしても、今回のはそもそもその建前からだいぶと離れた動きをすることになるからだ。
探し物は左右がする。左右が家の中をウロウロして調べる。ついでにみーこさんは過疎が進み孤立しているご年配を心配して見回ってる。いわばパトロールのような役割だ。
けれど今回凛花ちゃんが100点を取れるか取れないか、そして取れないなら取れるようにアドバイスするなら、それは多分占いと同じような役割でセーフだろう。けれどそこから凛花ちゃんのお母さんの思惑が何であれ、依頼外のことをするのはどうしたものかと思っているのだろう。
もしかしたら左右が乗る気でもないのは、左右が見たものが依頼内容以上のものだからなのかもしれない。