けれど逆も然りなのも揺るぎない事実ではある。やる気のない人間や、考えることをやめた人間は、そういった仕事は確実に不向きだ。そういった輩でも働けるのは黙々と同じ作業を繰り返すだけの仕事。例えば工場でベルトコンベアーから流れて来る荷物を振り分けるような、単純作業が合っていると言えるだろう。
 そう、それがタイプ別というものだ。それは生まれ持った特質だ。
 けれどそれも自分にあったやり方、考え方次第で変わることができるというもの。僕はそう信じている。
 未来が無限に広がっている小学一年生の凛花ちゃんに、絶対無理だなんて言葉を僕は突きつけたくはないのだ。

「ただいま」
「おかえりなさい」

 僕の声に反応してくれたのはばーちゃんではなく、キヨさんだった。そういえば祖母が今日もキヨさんが来るって言ってたっけ。

「キヨさん、こんにちは。祖母は裏の畑でしょうか?」
「ええ、お昼ご飯を作る材料を取ってくるからって言って、行ってしまったの」
「ははっ、人にご馳走するとなると祖母も気合が入るんでしょうね」
「別に有り合わせで十分なのにね。あっ、そうそう、昨日漬けた漬物を持ってきたから食べてちょうだいね。小梅さんから雅人さんがお漬物が好きだと聞いたから、好みの味だといいのだけれどね」

 小梅とは僕のばーちゃんの名前だ。二人は下の名前で呼び合うほど仲が良い。いや、このくらいの世代の方にはもしかするとそれが普通なのかもしれないが。

「ありがとうございます。キヨさんお料理が上手なので、間違いなく美味しいでしょうね」
「あら、ありがとう。そう言って貰えると作りがいがあるわね」

 ふふっと笑うキヨさんは、以前よりも若返ったように見える。きっと人と話して毎日何かしらやることがある方が人は生き生きとするものなのかもしれない。

「ところで、今朝も豊臣神社へ行っていたの?」
「はい。僕の日課である散歩コースでもあるので」
「私と一緒ね」

 キヨさんも最近は豊臣神社まで歩くのが毎日の日課になっているようだ。それは心身ともに良いことだと思う。

「そういえば、今日また依頼があったんです。それをお手伝いしようと思って昼食を取ったらまた神社に行くつもりなのですが」
「あら、どんな依頼なのかしら?」

 言っても良いのだろうか? これってコンプライアンスに引っかかったりしないのか? いや、もちろん趣味でやってるような新聞づくりに強固なコンプライアンスを遵守する契約などないが、どうなのだろう。