「それはどういう意味で……?」
「これも何かの縁だと思うのです。いいえ、”何かの”ではなく、きっと神様の思し召しかと思うのです!」

 僕の思っていた方向とは違う言葉が次々にみーこさんから放たれている。どうなっているのだろうか。
 ただ僕にわかるのは、みーこさんの手はとても柔らかいということだ。

「変態極まりないな、お前」
「あっ、ごめんなさい! つい勢い余ってしまって……」

 どうやらみーこさんは僕に浴びせられたらしい言葉があたかも自分に言われているのだと勘違いしたようだ。そのせいでみーこさんは僕の手をパッと離し、顔を赤らめて再び席に座った。

「いや、みーこに言ったわけじゃない」

 みーこさんを辱しめ傷つけた罪は重い。きっと左右のいる方向へ僕は鋭い視線を投げた。

「お前、俺が見えないんじゃなかったのかよ」
「悪は成敗せねばなるまい」
「煩悩だらけのお前に言われてたくないな。どうせみーこの手を握れなくなった腹いせだろ?」
「言わせておけば!」

 みーこさんの前でなんてことを言うんだ! 僕は左右の口を塞ごうと飛びかかったが、あっさり腕をすり抜けられてしまい、左右はテーブルの反対側、みーこさんの隣を陣取った。

「左右、佐藤さんはキヨさんに頼まれてここまで来てくださった心の優しい方でしょ。そんな言い方ばかりして、失礼じゃない」

 みーこさん……あなたこそ神使だ。むしろ神様だ。もしみーこさんが実は私が神なんです、とカミングアウトしたとしても僕は驚いたりしないだろう。

「それに佐藤さんはこれから私達のあやかし新聞作成を手伝ってくれるのよ」

 いやー、その返事はまだしていないとは思うのですが。さすがのみーこさん相手でもそれは了承しかねる内容だ。いくらみーこさん立ってのお願いだとしても、それを手伝うとなれば毎度毎度この生意気な小僧に会わなければならなくなるし、正直僕は学級新聞作りに参加するためにこの村に来たわけでもないのだ。

「その申し出は残念ながら、お受けできかねます。休暇中の身で大してやることがあるわけでもないので、楽しい思い出づくりとして参加してもいいなとは思うのですが、あいにく僕も祖母の面倒をみる必要があるので……」

 これは方便というもの。一人で田舎暮らしは心配ではなるが、面倒をみなければならないほどばーちゃんは衰えていない。むしろそれほど衰えているのならきっと両親が無理矢理にでもばーちゃんを一人にはさせていないだろう。