今日は終業式だけだから、半日で終わり。この教室で過ごすのも今日で最後だ。
今朝のHRで、クラスメートの前でそのことを告げた。みんな私のことなんてそれほど興味ないだろうと思っていたのに、外国に行くというだけで大騒ぎになった。
「葉山さん、夏休み明けにはもう日本にいないんだよね」
「寂しいー」
「アメリカのどこに行くの?」
「えっ、昔住んでた?すごーい!」
「なんで今まで隠してたのー。知ってたら英語教えてもらいたかったのに!」
「またこっちに帰ってくるんだよね?帰ってきたら連絡してよー」
こんなに注目されたのは初めてのことで、慣れないことに私はあたふたしっぱなし。今までほとんど話したこともなかった人たちと連絡先を交換して、たくさん話して、この人たちのことをもっと知りたかったな、と今になって、このクラスに名残惜しさが募った。

「まだ信じられない……なんでもっと早く言ってくれなかったの」
とふてくされている美咲。
「ごめんね。急すぎて、自分でも心の準備ができてなくて……」
「でも、まあ、のんびり屋なところは、光里のいいところでもあるよね。そのままでいてほしい気もする」
そして、ぽん、と私の頭に手を置いた。
「あーあ。もうこの頭、叩けなくなっちゃうのかあ。丸くて叩き心地がよかったのに」
「そこ?」
はあ、と美咲がため息を吐く。
「寂しいってこと。寂しすぎて部活に身が入らなくなりそうだわ」
「そんなこと言わないで頑張ってよ、部長さん」
3年生が引退し、正式に部長に任命された美咲は、たまに愚痴を吐きつつも、やる気は充分なのが伝わってくる。
その様子を見ていると、私も頑張らなきゃ、と励まされる。