「さあさあ陽太くん、いっぱい食べてね!」
「い、いただきます」
お母さんの得意料理である巨大唐揚げが食卓の真ん中にどんと置かれ、陽太が圧倒されている。
「久しぶりに見た。このアメリカンサイズな唐揚げ。おお、うまっ!」
「うふふ。どんどん食べてね」
久しぶりにうちに来た陽太に、お母さんは嬉しそう。お母さんの機嫌は料理におおいに反映されるので、今日の唐揚げはいつも以上に特大だった。
何も言わなかったけれど、やっぱり心配してくれていたんだとわかった。
「光里、やっぱり陽太くんと付き合ってたんじゃないの。ママはそうじゃないかなと思ってたけど」
とこっそり耳打ちしてくるお母さん。
「ま、まあね……」
本当は部屋で話していた相手は違う男の子なのだけれど、ややこしくなるから笑って誤魔化しておく。
この部屋で過ごすのもあとわずか。
陽太を夕飯に呼ぶことができるのも。
学校は明日の終業式で終わり。カレンダーの日にちが進むたび、だんだんできることが少なくなっていく。
その寂しさを拭うように、私たちはずっと笑っていた。