「…………」
「…………」
帰り道。マンションまでの道を2人で歩く。高校に入ってから、一緒に帰るのは初めてだった。
どうしよう、緊張する……!
会話がなにひとつ思い浮かばない。顔を見れない。陽太、背伸びすぎ!顔上にありすぎ!
なんだか付き合いたてのカップルみたいだ。
……というか、まさに、付き合いたてのカップルなんだ、私たち。
自覚した瞬間、顔が茹で上がった。
「光里、緊張しすぎ」
「よ、陽太こそ」
片思いだった中学の頃とは違う。
同じ距離でも、関係が変わったんだ。
そのとき、ふいに、私の手に、陽太の手が触れた。
「手、繋いでいい?」
「もう繋いでるじゃん」
まだ信じられない。陽太と手を繋いでいる。何年ぶりだろう。ずっとしたいと思っていたことが、今日1日で、全部叶ってしまった。
でもーーもうすぐまた、離れ離れになってしまう。
会おうと思えばいつでも会えた今までとは違う。会いたくても会えない距離に、行ってしまう。
そう思うと、繋いだ手が、急に心許なく感じた。

『会えないんだ。遠くに行ってしまったから』

ふっと、風が過ぎるように、聖の声が蘇った。
ああ、そうだ、色々ありすぎて、大事なことを忘れかけていた。
陽太に気持ちを伝えたれたのは、聖のおかげだ。
聖が約束してくれたから。
「あのね、陽太」
繋いだ手に、ギュ、と力を込める。
「紹介したい人がいるの」
「紹介?」
うん、と私は言った。
「聖っていう、隣に住んでる男の子なんだけどーー」