「いや、それはないよ」
と陽太はきっぱりと言った。
「清水、彼氏いるから。サッカーの試合見に行ったときも、彼氏と一緒だったし」
「ええっ、そうなの?」
そういえば、清水さんの弟の試合にふたりで見に行ったとか……そうか、あれはふたりで行ったんじゃなかったんだ。
「ただ、歳上だし見た目のタイプが全然違うから、一緒に来てると思われなかったんだと思う」
「えっ、タイプが違うって」
「見た目がオタクっぽいっていうか、いや、中身もだけど、でも清水もそういうの好きみたいだし、合ってると思う」

そう言えば、と清水さんが嬉しそうに話していたのを思い出す。

『彼氏が好きなキャラクターなんだ』

筆箱につけていたアニメキャラのストラップは、彼氏とおそろいで買ったと言っていた。
あのとき、たしかに違和感を覚えた。
陽太はそういうグッズに興味がないし、おそろいなんて嫌だって言いそうなのに。でも噂を聞いた後だったから、趣味が変わったのかもと勘違いしていた。
「じゃあ、電話は?前、マンションの前で、すごく楽しそうに電話してたよね?電話、嫌いって言ってたのに」
「めちゃくちゃ見られてるな、俺」
陽太は苦笑した。
「あれは、試合見に行ってから、清水の弟に懐かれちゃってさ。サッカー教えてほしいって。来年うちの高校入るっていうから、いい後輩になるだろうなと思ったら、俺もつい熱くなっちゃってさ」
「…………」
話を聞きながら、私は拍子抜けしてしまった。
じゃあ、私は清水さんの弟に嫉妬してたってこと……?